風が森を抜ける音は、まるで古の物語を語る吟遊詩人のようだった。枝葉が揺れ、光と影が地面に織りなす模様は、失われた王国の記憶を呼び起こすかのように静かに踊っていた。少女エリスは、深い緑の中を一人歩いていた。手には古びた地図と、小さな銀のペンダント。彼女の祖母が遺したそれは、過去と未来をつなぐ鍵だった。
森の奥には誰も知らぬ湖があり、夜ごと星の記憶が水面に映し出されるという。そこには、時を超えて語り継がれる伝説が眠っている。エリスは、その謎を解くために旅に出た。足元の小径には、動物たちの足跡が交差し、風に乗って囁かれる声が道を示しているようだった。
突然、空が開け、湖が姿を現した。水面は鏡のように静まり返り、星々が昼の空にも関わらず、そこに浮かんでいた。エリスはゆっくりとペンダントを湖にかざした。すると、光が放たれ、彼女の前に現れたのは、過去に封じられた記憶を司る精霊だった。

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